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東京国際レズビアン&ゲイ映画祭が大盛況のうちに閉幕した。会場で、観客の人たちの声を拾った。日本の同性愛者が、それぞれに考え、できることから行動するべクトルを心に備えたいものと、 あらためて感じた。 7月11日から21日まで東京の「新宿バルト9」と「表参道スパイラルホール」で開催された「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭(Tokyo International Lesbian & Gay Film Festival:TILGFF) 」は大盛況だった。LGBT〔※1〕の一大イヴェントだが、けっしてレズビアンやゲイの人たちだけが鑑賞に訪れたわけではない。 〔※1〕LGBT:レズビアン.ゲイ.バイセクシュアル.トランスジェンダーの総称。性的マイノリティー。 今回の映画祭のために、アジア/太平洋.北米.ヨーロッパ、―――世界17カ国から届けられた「同性愛系作品」の数々は、どれも滅多に見られない選りすぐりのものばかりだった。この絶好の 機会を逃すまいと、さまざまな国籍のレズビアンやゲイの人たちが、観客の多数を占めていたことは確かだ。 しかも、同性愛ではない少なからぬ人たちも、同性愛系映画作品を鑑賞した。今年で17回目となったこの映画祭が築き上げた大きな特徴と言える。 * 会場で、観客の人たちの声を拾った―――。 映画祭会場の1つ、表参道スパイラルホール(筆者撮影)●ゲイの友だちがいる 初めてこの映画祭へやってきたと言う20代の男女2人連れは、ともに同性愛者ではないけれども、インターネットでこの映画祭を知り、興味を抱いて訪れた。興味の理由を訊くと、男性が「ゲ イの友人がいるもので……」。同性愛の人たちに「まったく抵抗は無いですね」と、すがすがしい。 女性のほうは「レズビアンの友だちはいないけど、交際を求められた経験ならあります」と、はにかんだ。レズビアンの人に対しては、また関係を誘われるのではないかと、ついついよけいな警 戒心を抱くが、ゲイの友だちだったら、いても構わないと笑った。 ●教え子にも同性愛者がいるかも知れない 「前にこの映画祭で1本見ましたが、今年はまだなんです」と話す50代のカナダ人男性は、作品を鑑賞中の奥さんを会場ロビーの外で待っていた。 「私は日本で教師をしています。生徒たちの中には同性愛者もいるでしょうから、彼/彼女らの気持ちを理解するために、こうした映画を見るのは参考になるでしょうね」。この映画祭が開催さ れる意義をひと節かたり、「毎年行われているとは、素晴らしいですね」と付け加えた。 カナダ政府は、居住条件を付けずに同性結婚を認めている。記者が1人のゲイとして1度カナダを訪れたいと話を向けると、「カナダは日本よりセクシュアリティー〔※2〕にオープンマインド で、同性愛に理解のある国と言われています。大都市では確かにそうでも、郊外や農村では依然、保守的な考えを持つ人たちが大勢います」と、少し残念そうに応じた。 〔※2〕セクシュアリティー:性的指向のこと。性的に惹かれる対象が同性/異性/両性のいずれに向くのか、その方向性。 スパイラルホール前の映画祭看板●今は、こそこそする時代ではない やはり50代ぐらいの日本人男性に声をかけた。「何をやっているのかなと思って、散歩中にちょっと寄ってみただけなんですよ」と答えた。 どのような映画祭かを説明すると、「以前、新聞で見たことがあります。これが、そうでしたか」と、このヘテロ(ヘテロセクシュアル=異性愛)男性の耳にも「国際レズビアン&ゲイ映画祭」 の名前が達していて、相当に広く認知されていることが分かった。 同性愛を扱った映画を一挙に上映する、この映画祭をどう思うか、尋ねてみた。 「構わないんじゃないですか。こそこそするよりも大っぴらにやったほうが、かえっていいでしょう。昔は偏見があったものですが、今じゃ、テレビにたくさんゲイのタレントが出ているし、私 は抵抗がありませんけどね。もっと年齢層が上の人たちには抵抗感が強いかも知れませんが」と、意外に好意的だった。 ●授業でレズビアン&ゲイ(L&G)映画祭を紹介 今回でこの映画祭へは10回目というヘテロ女性は、学校で女性学やジェンダー論を教えている。もともと映画が好きなのと、自分の学究テーマとの絡みもあって、講義の中で生徒たちに、この 映画祭を紹介してきたという。 「例年、こうしてL&G映画祭が開催されることはうれしいですね。今後とも応援してゆきたいと思います」と、彼女の表情は明るかった。いつも友人と一緒に見ることが多く、この日も「元教 え子」という男性を伴っていた。 かつて「こんな映画祭もある」と講義で教えられたその男性もヘテロ。この映画祭に来るのは7回目だ。今年は、新宿バルト9の会場で、すでに3本も見ているという。あと4本は見たいとのこ とだった。 「ゲイやビアンが出てくる映画に、何の違和感もありません。(一般的な映画よりは)少し重めに見ますけど」と、同性愛者の置かれている状況を理解する一方、「いいじゃありませんか。カミ ングアウトできることは素晴らしい」と何の屈託もなかった。 * この映画祭を楽しみにやってきたレズビアン&ゲイの当事者たちは、どのような感想を持ったのだろう―――。 ●「ビアンもの」と「ゲイもの」は違う あるレズビアン.カップルの2人は、去年からこの映画祭を見に来るようになったという。同じ同性愛とは言っても、ゲイ映画とレズビアン映画は異なるとのこと。 「ゲイものは、性的な描写がレズビアン映画より濃厚だよね。恋心ひとつを描くにも、マインドの違いが引っかかって、ビアンには簡単に理解できない部分があるかも」 と、男女が生物としてもともと持っている恋愛や性衝動の運び方の差異が、映画の心的表現の相違となって表れていると分析。ゲイ映画に比べ、レズビアン映画は絶対数が少ないのではないかとも 感じたようだ。 「でも、徐々に”ビアンもの”の作品選定が充実してきたみたいで、今年のビアンものは去年のより面白いと言えるかも。今回は、去年よりも多く見ようと思っています」と、2人は揃ってうなず いた。 ●全作品鑑賞OKのフリーパスで 「ここ4、5年ぐらい毎年来ています」と答えたのは、30代ゲイ男性だ。年に通算100本以上を見ているほどの映画通。 「ゲイとかビアンとかこだわらないで、どんな作品でも全部みてやろうみたいな。毎回そんな感じです。いい映画が見たいって、ただそれだけです。僕は映画が好きだから」。彼はいつも、スパ イラルホールで上映の全作品を鑑賞できるフリーパス(スパイラルパス)で見るのだという。 「こういうイベントって、普段は、なかなか見られない映画が見られるんで、いいですよね。頑張って(開催を)続けて欲しいですね」 今回、目星を付けていた作品は2本で、どちらも狙い通りだったとのこと。その夜は、見終わった後でゲイの友だちと遭遇する予定だと言い、「ぜひ楽しんで下さい!」と記者をいたわってくれ た。 ●ゲイ老人の孤独 独り、会場ロビーのすみで佇んでいる年配の男性がいたので、お話を伺った。子どものころから「男なのに男を好きになってしまう」ことを自覚していたが、これまでまったく交際経験を持たず 、密やかに慎ましく、孤独のうちに生きてきたのだという。年齢は70歳。 今まで、こっそりとボーイズラヴ映画を見に行くこともあったが、L&G映画祭は今回で2回目。一般映画雑誌の紹介記事を見てやってきたという。 「インターネットは分かりません。ゲイの雑誌なんて、家族に見られたら大変だから、買えるわけがありません」。ゲイ.コミュニティーとは、まるで縁遠い生活を続けてきたのだ。 「今日も、家族には何も言わずに出掛けて来ました。(ロビーで配布されたL&G映画祭のプログラムなどを指して)こんなあからさまにゲイだと分かるものは、とても家に持って帰られないの で、どこか途中で捨ててしまおうかと思っています……」。老人は、寂しそうに足下へ視線を落とした。 * 言うまでもなく、社会のいたるところで同性愛者は生きている。その推定数は東京都内だけでも、数十万から百万人の規模だ。 東京国際レズビアン&ゲイ映画祭には、8日間の開催期間中、約8,000人の入場動員があったとのこと。去年より1,500人以上も多い数字だ。 その人数の有りようが、東京そして日本の同性愛者状況をどれだけ凝縮、そして反映させたものなのか。一概には説けないが、少なくとも同性愛者たちと、同性愛者を取り巻く「理解ある人たち 」の一断面が、この映画祭へ集った人たちの姿を見ることで推測できる。 17年間も、手弁当で頑張り続けている映画祭の運営サイドの尽力に敬意を表しつつ、少しずつで構わないから、日本の同性愛者の1人1人が、それぞれに考え、できることから行動するベクト ルを心に備えたいものと、あらためて感じた。 |
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